令和6年能登半島地震を契機に、道路構造物の耐震性や災害対応力を強化するための技術基準改定が進行中です。本記事では、土工構造物、橋梁、トンネル、舗装の各分野における改定(案)の主要ポイントを詳しく解説します。技術士試験を受験する方にも、最新情報を把握するための参考資料としてご活用いただけます。
1. 道路土工構造物技術基準の改定(案)
道路土工構造物では、能登半島地震で確認された課題をもとに、不確実性への対応や性能規定化が進められています。
- 不確実性の低減
地質や地盤の性状を的確に把握するため、調査段階でのモニタリングや既存資料調査の強化を規定しています。また、排水施設の設置や盛土の配置検討をより具体化しました。 - 耐震性の向上
盛土や斜面崩壊のリスクを軽減するため、荷重設定や構造形式の選定基準が規定されています。特に谷埋め盛土や斜面地形の対策が充実しています。 - 性能規定化
道路機能の喪失を防ぐため、構造物の状態だけでなく、道路ネットワーク全体としての性能確保を目指した規定が強調されています。
2. 橋、高架の道路等の技術基準(道路橋示方書)の改定(案)
橋梁では、耐久性と災害復興の容易さに焦点を当て、改定が行われています。
- 限界状態設計法の高度化
部材単位の性能評価を従来の基準から発展させ、橋全体の性能を保証する設計手法が導入されます。 - 続発地震への対応
短期間で複数の地震が発生することを想定し、損傷が限定的で復興が容易な設計基準が追加されました。 - 設計耐久期間の明確化
耐久性確保の手法が明確化され、ライフサイクルコストを考慮した設計が求められるようになりました。特に、部材の耐用年数と補修計画が整合性を持つよう規定されています。
3. 道路トンネル技術基準の改定(案)
トンネル分野では、能登半島地震による被害を教訓に、特殊条件下での対応が強化されます。
- 性能規定化の推進
トンネルごとに求められる耐久性や耐荷性能を明確化し、新技術の実装を促進します。例えば、インバート設置や覆工コンクリートの強化が具体的に示されています。 - 地震リスク軽減
特殊条件(例:地山の大規模変形や湧水の多い区域)を予め細かく検証し、リスクを最小化する設計が規定されています。覆工崩壊を防ぐための配筋や新技術などを検討することが求められています。 - 点検・維持管理の効率化
施工時の記録を活用し、維持管理段階での対応が容易になるよう規定されています。定期点検の課題も整理され、改善が進められています。
4. 舗装の技術基準見直し(案)
舗装技術では、環境対応や長寿命化を目的とした改定が行われています。
- 循環型社会への対応
再生アスファルト混合材(As合材)の水平リサイクルが促進され、再生利用率の向上が図られています。具体例として、改良された再生技術や耐久性向上の事例が含まれています。 - 脱炭素社会への貢献
中温化技術や低炭素材料の導入を促進し、ライフサイクル全体でのCO₂削減を目指します。 - ライフサイクルコストの評価
各技術の性能とコストを正確に評価する基準が追加され、適切な維持管理が実現されるようになっています。
まとめ
令和6年能登半島地震を教訓に、道路技術基準の改定は災害リスク軽減と道路機能の向上を目指して進められています。これらの改定内容を理解することは、技術士試験対策としても重要です。改定のより詳細な内容は、R7.3月予定の「第25回道路技術小委員会」で公表されるかと思います。また情報提供させていただきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
出典:第24回社会資本整備審議会 道路分科会 道路技術小委員会(国土交通省)
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