「道路メンテナンス年報2023」から学ぶ|点検と修繕の現状と未来への課題

政策 政策

道路メンテナンス年報(2023)が公表されました。この年報には、道路施設の点検状況や修繕の進捗、そして地方公共団体が直面する課題と取り組みが詳しく記載されています。

技術士試験の必須テーマでは「災害」や「生産性向上」と同じくらい、「維持管理」も重要なテーマです。令和7年度の試験では維持管理が出題される可能性もあります。

本記事では、点検と修繕の現状を整理し、未来への課題を考察します。

各施設の点検実施状況

橋梁、トンネル、道路附属物など主要な施設では、これまでの点検サイクルが以下のように進められています。

  • 橋梁(約73万橋)・トンネル(約1.2万箇所)・道路附属物(約4万箇所):
    • 1巡目(2014~2018)完了
    • 2巡目(2019~2023)完了
    • 3巡目(2024~開始)
  • 舗装点検:
    • 2022年に開始。
    • 国管理道路で約45%、都道府県・政令市管理道路で約38%の点検が実施済み。
  • 特定道路土工構造物(切土法面高15m以上、盛土法面高10m以上)の点検:
    • 令和5年から法令化され、点検対象施設が増加される予想。

修繕の現状:減少する修繕必要施設

建設後50年を経過した施設が増加する一方で、修繕が必要とされる施設数は減少しています。

  • 老朽化の進行:
    • 橋梁: 2018年約13万橋 → 2023年約21万橋
    • トンネル: 2018年約2千箇所 → 2023年約3千箇所
  • 修繕必要施設の減少(判定区分Ⅲ・Ⅳ):
    • 橋梁: 約6万9千橋(2018年末) → 約5万6千橋(2023年末)
    • トンネル: 約4400箇所(2018年末) → 約3300箇所(2023年末)

緊急措置が必要な施設(判定区分Ⅳ)については、2023年度末時点で、撤去や廃止の割合が橋梁40%、トンネル42%、道路附属物等34%となっています。

地方公共団体の課題と対応策

現在、地方公共団体が管理する橋梁は約66万橋と、9割以上を占めています。また、トンネルは約8千箇所と、約7割を占めています。

点検結果で「早期に措置を講ずる状態の判定区分Ⅲ」と、緊急に措置を講ずる状態の判定区分Ⅳ」の修繕等の措置が完了していない地方公共団体が多いのが現状です。

地方公共団体が管理する施設は膨大で、修繕の進捗に遅れが見られます。

  • 現状:
    • 橋梁措置完了率: 13%
    • トンネル措置完了率: 55%
    • 道路附属物措置完了率: 56%
  • 課題:
    • 橋梁が他の施設と比べて圧倒的に数が多い。
    • 技術者不足(市区町村の33%で土木技術者が不在)。

これに対応するため、以下のような取り組みが進められています。

1. 地域一括発注の推進

市区町村の人材・技術力不足を補うため、都道府県が点検・診断を一括実施。現在28%の市区町村が活用中です。

2. 直轄診断・修繕代行

緊急かつ高度な技術力を有する可能性が高い橋梁については、直轄診断を実施しています。直轄診断を実施した橋梁については、各道路管理者からの要請があれば、修繕代行事業を行っています。

直轄診断は、地方整備局、国土技術政策総合研究所、国立開発研究法人土木研究所の職員で構成する「道路メンテナンス技術集団」が派遣されています。

3. 個別施設計画の策定

各施設で計画的な維持管理が進められており、点検結果を基に5年を目途に更新が行われています。

4. 新技術の活用

  • 点検の新技術活用率: 橋梁36%、トンネル23%、道路附属物18%。
  • 修繕の新技術活用率: 橋梁67%、トンネル66%、道路附属物69%。

点検業務の新技術活用例が低いのは、まだまだ従来方法の方が費用面を安く抑えられるためと報告されています。

新技術活用事例および集約・撤去事例集が道路局HPにて公開されているので、参考になると思います。

未来への課題

  • 点検のさらなる効率化: 新技術導入の加速が必要。
  • 地方公共団体の支援強化: 人材不足や予算面の課題を解決するため、より広範な支援策が求められます。対策として、外部からの技術指導や診断・修繕代行をより一層進め、情報共有体制を強化していく。
  • 予防保全への移行: 現状の対応から計画的な保全への移行が必要です。

まとめ

「道路メンテナンス年報2023」から見えるのは、点検・修繕が進展している一方で、地方公共団体の課題が依然として大きいことです。技術者や管理者が一丸となり、未来のインフラ維持管理に向けた取り組みを加速する必要があります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

出典:道路メンテナンス年報(令和5年度)(国土交通省)

ペンシル

この記事を書いた人
名前:ペンシル

専門部門:建設部門

プロフィール:
はじめまして! 私は建設コンサルタント業界で10年の実務経験を持ち、現在はインフラ維持管理業務に取り組んでおります。
技術士資格の取得を目指して日々勉強中です。
この挑戦を通じて得た経験や知識を、同じ目標を持つ皆さんと共有したいと思い、ブログ「技術士めし」を運営しています。
私のブログが、同じく技術士試験を勉強してるあなたにとって少しでもお役に立てるのなら大変嬉しく思います。
よろしくお願いします。

お問い合わせ:こちら

ペンシルをフォローする
政策
ペンシルをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました