技術士試験では、国の政策や最新データを押さえておくことが重要です。特に「国土交通白書」は、出題者の視点と受験者の答案作成に直結する貴重な資料です。今回は、令和7年版国土交通白書で使える注目ポイントを整理しました。
Ⅰ部:試験に使える数値
まずは「使える数値」です。論文で具体的な数字を引用できると説得力が増します。
- 労働時間の実態
2023年度の建設業労働者の平均労働時間は 2,018時間。全産業より約62時間長く、依然として高水準。 - 年齢構成の偏り
2024年の55歳以上の割合は、全産業32.4%に対して建設業36.7%。29歳以下は11.7%と、若年層が極端に少なく高齢化が深刻。 - 市区町村の技術系職員不足
土木・建築技師が「5人以下」の自治体が全体の約半数。さらに「ゼロ」の自治体も25%。 - 人口動態の変化
65歳以上人口は2020年に3,603万人(29%)→2040年には3,928万人(35%)。一方で19歳以下人口は2020年2,074万人→2040年1,547万人→2070年1,099万人へと減少。 - 労働生産性
建設業は労働投入量が20%減少する中、労働生産性は約40%上昇。しかし他産業と比較すると依然として低水準。要因は「天候依存」「現場打ちコンクリート施工など人手依存」。 - 地域公共交通の衰退
2050年には居住地域の約半数で人口が50%以上減少すると予測。加えてコロナ禍もあり、路線バスや地域鉄道の多くは赤字経営
Ⅱ部:国の方向性
国の方向性を知るには、本文を読むよりも、概要版を読んだ方が全体像を掴みやすいです。概要版より、建設部門で使えそうな方向性をまとめました。
- 省人化・省力化技術の推進
人工衛星、AI、センサー、自動化、ロボット、ドローンの利活用。
→ 建設機械の遠隔操作・自動化も重点。 - 地域インフラ群再生戦略マネジメント
広域連携、包括的民間委託、PPP/PFI、ウォーターPPPの推進。 - 民間活力の導入
Park-PFIやRIVASITEなど、民間事業収益と連動したインフラ整備。 - 人材戦略
多能工(マルチクラフター)の活用、小規模現場向けには「ロボットより電動工具に近い省力化機器」の普及。 - 交通分野の変革
オンデマンド交通の拡大 - インフラ保全の転換
「事後保全」から「予防保全」へ。これにより今後30年で累計3割のコスト縮減が見込まれる。人手不足対策のため、住民協働による橋のセルフメンテナンス。
技術士試験での活用ポイント
「令和7年度 技術士第二次試験 受験申込み案内」の最後にあるお知らせに、「令和8年度技術士第二次試験より改訂版コンピテンシーを適用した試験を実施することとします。」とあります。
その中に、「必要に応じてデータ・情報技術を活用して定義し」とありますので、Ⅰ部の試験に使える数値を参考にしてください。
また、Ⅱ部でまとめられている国土交通白書の解決策はあくまで方向性です。そこから、国の政策や事例を自分で調べ、説得力を持たせていく過程がA評価につながります。
私が思う解説策を考えるうえで大切なこと
技術士問題の解決策を考えるうえで、「それは実現可能な解決策ですか?」という問いを自分に問いかけてほしいです。
例えば、インフラの予防保全の転換は昔から解決せず、ずーっと言われていますよね。それはなぜかを考えて、解決策として実現するにはどうしたら良いのかを事例を調べたりして、自分の言葉で書くことが重要です。
ただ政策を書くのではなく、どうやったらその政策が実現可能になるのかを書くことが重要だと私は思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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