✅この記事はこんな方におすすめ
- 「観点って結局どう書けばいいの?」と迷っている
- 課題の前に“観点”を書けと言われてもピンと来ない
- 観点を論理的に、かつ読みやすく書くコツが知りたい
はじめに|なぜ「観点」が大切なのか?
技術士試験を受けた方なら、一度は「観点ってなんだろう?」と迷ったことがあるのではないでしょうか。私自身も最初はよくわからず、何を書いていいか手が止まってしまった経験があります。
令和6年度の技術士(建設部門)試験では、「(※)解答の際には必ず観点を述べてから課題を示せ。」という記述が明記されました。
つまり、“課題の出発点”として観点を明示することが求められるようになったということです。
しかしこの観点、はっきり定義されているわけではなく、どのように設定すればいいのか悩む方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんな観点の意味や書き方、選び方、避けたいNG例までを、具体的な事例とともに解説していきます。
観点とは?|技術士試験における「観点」の意味
「観点」という言葉は、論文やプレゼンでよく出てくる表現ですが、技術士試験では少し特殊な意味合いを持ちます。
一言で言えば、「観点=その課題をどの視点・方向性で分析するかを示す“出発点”」です。
例えるなら、観点は「方向を指し示すコンパス」。
その方向(=観点)がズレてしまえば、どれだけ丁寧に課題や対策を書いても、論点自体がずれてしまうのです。
観点の種類と選び方|ヒト・カネ・モノだけじゃない!
これまでは、「ヒト・カネ・モノ」という3要素で観点を立てるのが一般的でした。しかし、近年、問題文やルールが増えて複雑化しています。以下の令和元年度の問題と令和6年度の問題を比べてみると、明らかに長文化しています。
ヒト・カネ・モノの視点は今も重要ですが、それに加えて「問題に即した視点」を持つことが合格へのカギとなります。
令和元年度 Ⅰ-1
我が国の人口は2010年頃をピークに減少に転じており、今後もその傾向の継続により働き手の減少が続くことが予想される中で、その減少を上回る生産性の向上等により、我が国の成長力を高めるとともに、新たな需要を掘り起こし、経済成長を続けていくことが求められている。
こうした状況下で、社会資本整備における一連のプロセスを担う建設分野においても生産性の向上が必要不可欠となっていることを踏まえて、以下の問いに答えよ。
令和6年度 Ⅰ-2
我が国では、年始に発生した令和6年能登半島地震を始め、近年、全国各地で大規模な地震災害や風水害等が数多く発生しており、今後も、南海トラフ地震及び首都直下地震等の巨大地震災害や気候変動に伴い激甚化する風水害等の大規模災害の発生が懸念されているが、発災後の復旧・復興対応に対して投入できる人員や予算に限りがある。
そのような中、災害対応におけるDX(デジタル・トランスフォーメーション)への期待は高まっており、既に様々な取組が実施されている。
今後、DXを活用することで、インフラや建築物等について、事前の防災・減災対策を効率的かつ効果的に進めていくことに加え、災害発生後に国民の日常生活等が一日も早く取り戻せるようにするため、復旧・復興を効率的かつ効果的に進めていくことが必要不可欠である。
このような状況下において、将来発生しうる大規模災害の発生後の迅速かつ効率的な復旧・復興を念頭において、以下の問いに答えよ。
観点を事例で考える|令和6年問題をベースに解説
書きやすい観点には、「技術」「情報」「品質管理」「人材育成」「コスト削減」などがあります。他にも、環境、安全、防災、持続性など、問題から連想したできる観点を設定してかまいません。
観点のパターンについて、先ほど示した、令和6年度Ⅰ-2の過去問を事例に考えていきたいと思います。
DXを活用するうえで進めたい課題は、「DXの推進」や「デジタル化」だと思います。
観点としては「技術」としてまとめることもできますが、令和6年の問題文を意識するなら、「迅速・効率化」「防災・減災」「復旧・復興」といったキーワードで多面的に捉えることも可能です。
以下に、R6の問題をベースとした観点と課題の書き方例を紹介します。
ただし、どの構成でも合否を左右するのは論理性と一貫性です。最終的には、提示する課題が自分の論文全体の流れと整合しているかが重要です。
<書き方例1>汎用パターン
課題1:DXの推進強化
・技術の観点
課題2:情報連携体制の構築
・情報の観点
課題3:DX技術者の育成
・人材育成の観点
<書き方例2>問題文を意識したパターン
課題1:インフラの耐震強化
・防災・減災の観点
課題2:情報連携体制の構築
・迅速・効率化 の観点
課題3:DXの推進強化
・復旧・復興の観点
※観点を書くときの注意点
近年の出題では、「人材や予算に限りがある中で」という表現が出てきています。つまり、「人材確保」や「財源確保」といった、足りないものを補う課題はNGですのでご注意ください。ただし、「人材育成」「コスト削減」といった、限られたリソースの中で工夫する視点は、適切な観点として認められます。
また、観点を設定する際には、「建設技術者の立場」で課題をとらえることが重要です。 例えば、「DXの取り組みが住民に十分に理解されていない」というような一般論ではなく、「DX技術の活用が不十分である」といった、技術的な視点から課題を捉えるのが良いかと思います。
まとめ
今回は「観点」について考えてみました。
私が思うのは、「技術士論文にこれを書けば必ず合格できる」という“正解”は存在しない、ということです。
もしそうした正解があるなら、もっと合格率が高くてもいいはずですよね。
実際に合格者の論文を見ると、書き方は人それぞれです。けれども共通しているのは、「読みやすい」「わかりやすい」「納得できる」構成である、という点です。
だからこそ、いろんなやり方を知ったうえで、自分自身が「読みやすい」「伝えやすい」と感じられるスタイルを見つけることが、合格への一歩だと思います。
試験まで、あと2か月ちょっと。一緒に最後まで頑張りましょう!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント